桜100周年記念事業 NEWS LETTER Vol.5

2014年5月21日発行

新緑の季節となりましたが、皆様方におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

今年の冬の寒さが厳しかったことが幸いしたのか、桜の開花は例年より遅れ、桜祭りを締め括る今年のストリート・フェスティバルは、晴天にも恵まれ、久し振りに満開の桜の下で開催されました。多くの皆様が、さぞ桜祭り最大のイベントを楽しまれたことと思います。

4月6日には、昨年11月に完了したタイダル・ベイスン景観整備により日本庭園風に整備された“Japanese Stone Lantern Plaza”で今年初めて灯篭点灯式が行われました。この場所が、これから末永く日米の文化外交のシンボルとしての役割を担っていくことを切に望んでやみません。

さて、桜100周年記念事業ニュースレターもこれが最終の5回目となりました。4月末時点での記念事業の進捗につきまして、以下ご報告をさせて頂きます。尚、これら記念事業の内、日本語教育と文化交流事業については引き続き継続して活動を行います。今後は当財団のホームページで適宜当該事業の進捗等につきご報告をさせて頂きます。

これまでの桜100周年記念事業の活動に、ご理解とご協力を賜りましたことに御礼を申し上げますと共に、今後とも当財団の活動につきましてご支援を宜しくお願い致します。

ワシントン日本商工会財団理事長  大出 隆

各事業のアップデート

次世代の日米関係を担う人材を育成し、両国パートナーシップの基盤をより強固­なものにするため、日本語を話せる米国人を育成することは大変重要な課題になっています。そこで商工会財団では、米国での日本語教育を多面的に支援していくことで米国の若者に日本という国やその文化を知ってもらい、それを日本語学習への関心に繋げ、さらには彼らに日本語を活かしたキャリアを考える機会を提供するという、一貫した流れを持つ複数の事業を構築しました。これらについての活動状況を報告致します。

① サクラグラント

サクラグラントは、ワシントンDC地域(ワシントンDC、メリーランド、バージニア、デラウェア各州)、ニューヨーク地域(ニューヨーク州、コネティカット州、ニュージャージー州)にあるK-12レベルの公立、私立、チャーター、マグネットスクールの日本語教育や日本文化教育の支援を目的に設立されました。2013年は春以降、当該地域の学校からの応募、グラント委員会の審査を経て下記の31校に対するグラントが決定し、10月から下の表のとおり送金して参りました。2014年も5月に当該地域の学校等に対してグラントの案内を送り、6月に応募締め切り、9月にグラント委員会の審査を経て決定し、その後に送金という日程で進めていく予定です。

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今回は上記のグラントを授与された学校のうち、Eleanor Roosevelt HS(以下、ルーズベルト高校)におけるグラントの活用状況をお伝えします。

  • ルーズベルト高校は、メリーランド州の姉妹県である神奈川県の同県立横浜翠嵐高校と1982年より姉妹校になっており、同高校との交流事業にサクラグラントを活用しました。交流事業は、毎年20~30名の学生や教職員が交互に学校を 訪問し合い、一週間程の日程で授業や野外活動に参加、ホームステイを行うものです。
  • 当商工会財団は、2014年3月にルーズベルト高校で開催された交流事業の歓迎式典に招待されました。同校講堂に約300人の生徒が集まり、両校の生徒が劇やダンス、音楽を披露しました。ルーズベルト校の教頭と外国語担当教師によると、同校の外国語カリキュラムの中でも、日本語は人気科目であるとのことでした。また、横浜翠嵐高校との交流事業もルーズベルト校では伝統行事として定着し、歓迎式でのイベントに向けた準備から同校の生徒は盛り上がるとのことでした。
  • 人格形成期である高校生達の日米交流には、非常に大きな意味があります。今回の歓迎式をみて、その支援にサクラグラントは有効に活用できていることが確認できました。

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サクラグラントは2012年から始まり、 2016年まで5年間にわたって公募を続ける方針です。本グラントは全米日本語教師会などでも話題に上り、日本語教師の方々から感謝の声を多く頂いております。今後も商工会財団のWEB等を通じて、グラントを授与された学校や教師の方々から具体的な使い道などフィードバックを紹介する予定です。

② ワシントンDC日米協会主催「さくらまつり」日本語テントの設置

今年も引き続き、4月12日にワシントンDC日米協会(以下日米協会)が開催する「さくらまつり−ストリートフェスティバル−」の一角に、「Let’s Learn Japanese 日本語できます!」テントを設置しました。 本テントでは、例年同様「日本語できます」というおそろいのTシャツを着たボランティアが、ひらがな、カタカナ、漢字の由来、習字や日本のゲームなどを紹介し、来場者に日本語の面白さを実際に体験してもらいました。

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③ 日本語教育に関するシンポジウム・セミナー

日本語を学ぶ学生・日本語教師・日本企業の情報交換とネットワーキングの機会を設けるために、シンポジウムやセミナーなどイベントの開催について検討を続けています。昨年は特にイベントを開催しませんでしたが、今年は開催を目指したいと考えております。

当商工会財団は、日本政府・在米日本大使館等のイニシアチブのもと、 タイダル・ベイスン景観整備事業を資金面で支援してきました。その事業がJapanese Lantern Plazaの完成により、昨年末を持ちまして無事完了したことは前回ご報告しました。今回は、このJapanese Lantern Plazaにおいて2014年4月に開催された日本灯籠火入れ式典(州協会全米協議会=NCSS主催)の模様を撮影した写真を掲載いたします。

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この場をお借りして、本景観整備事業の推進にご尽力を頂いた皆様に、改めまして心より御礼を申し上げます。

本事業は「桜100周年」を首都ワシントンDCだけの行事に留めず、全米レベルにも広く展開しようという趣旨に基づきスタートしたもので、在米日本大使館のイニシアチブを当商工会財団がサポートし、米国植樹団体などからの協力を得て実施されて参りました。各申請団体の提案により、州や市庁舎、街の目抜き通り、大学キャンパスといった各地の象徴的な場所を対象に植樹の輪が広がり、最終的には以下に掲げる21プロジェクトに当財団よりグラントが授与されました。全米桜植樹プロジェクトはご案内の通り2014年4月を以って終了させて頂きました。ご支援有難うございました。

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3月20日から4月13日の間、ワシントンで開催された全米桜祭りでは例年と同様多くの文化交流イベントが開催され、全米から訪れた多くの人々が参加しました。当商工会財団が支援している全米桜祭り協会(NCBF)や在米日本大使館が中心となり、踊り、音楽、料理、アニメ、文学、囲碁将棋・カルタ、先端技術そして日本語等全ての「ソフトパワー」をアピールするイベントが開催されました。当商工会財団は、財務的な支援のみならず、商工会会員や家族を中心に多くのボランティアを募り、これらのイベントの運営を支援しました。4月6日には、州協会全米協議会(NCSS)が主催する「日本灯篭火入れ式」が、当商工会財団が資金面で支援して新たに完成した「日本灯篭プラザ」で開催され、200名以上の日米関係の推進者が集まりました。このような文化交流の継続は、ワシントンにおける日本の存在感の維持と強化に重要な役割を果たしています。当商工会財団は今後も文化交流の推進に努力をして参ります。

本事業では、 モーリーン&マイク・マンスフィールド財団の協力のもと、日米関係の将来像構築に向けた提言策定を目標に、米国の産官学で活躍する若手専門家を中心にした「進化と繁栄を共有するためのマンスフィールド財団タスクフォース(以下、タスクフォース)」を結成しました。

同タスクフォースは昨年6月6日、 キャピトル・ヒルで日米関係に対するビジョンの草案についての「中間発表会」を開催しました。草案の内容は、「現代日米ビジョンの構築」と題する提言書としてとりまとめられ、同年11月に日本語・英語の二カ国語で発表されました。提言の内容は、「日米両国の経済を強固で活力あるものにするため、先進的かつ戦略的な取り組みを行う」というもので、タスクフォースのメンバー7名による具体的な提言が掲載されています。

日本語版:http://mansfieldfdn.org/japanese-2/
英語版:http://mansfieldfdn.org/program/dialogues/u-s-japan-task-force/

同年11月29日から12月5日にかけては、トーマス・シーファー前駐日米国大使を含むタスクフォースの一行が、この提言書発表のため札幌・仙台・名古屋・大阪・京都・熊本の6都市を訪問しました。各地で政財界やマスコミとのディスカッションを行うとともに大学での公開セミナーを開催し、将来の日米関係について、積極的で建設的な議論を交わしました。

(参考)マンスフィールド財団の提言タスクフォースウェブページ
Mansfield Foundation Task Force on Crafting a Contemporary U.S.-Japan Vision for Shared Progress and Prosperity
公式サイト:http://mansfieldfdn.org/program/dialogues/u-s-japan-task-force/

こうして昨年末、提言書の完成、ワシントンDCおよび日本各地での発表会開催、並びに、米国の次世代で活躍する日本研究専門家への支援という成果を残して、本事業は成功裡に終了致しました。

皆様方のご尽力により、桜100周年記念事業としての知的交流支援は終了しました。しかし「桜」をきっかけとして私たちが撒いた「種」は芽生え、着実に成長を続けております。今後それをどのように育成していくべきなのか、ワシントン日本商工会財団として、これからも引き続き検討していきたいと思っております。

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